2026年6月6日土曜日

第49回D問題 第26問 食物アレルギーに伴うアナフィラキシーの判断と、自己注射用アドレナリン(エピペン)の絶対的な適応基準(症状)を問う問題

 26 32歳の女性。そばアレルギーがあり、処方された自己注射用アドレナリンを所持している。昼食後に掻痒感が出現し、会社の同僚が救急要請した。

 救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数28/分。脈拍100/分、整。血圧102/82 mmHg。SpO2値 97%(室内気)。

 この傷病者に対し自己注射用アドレナリンの適応となる症候はどれか。1つ選べ。

1 眼瞼腫脹

2 流涙

3 鼻汁

4 呼吸困難

5 下痢


解答 4


解説:エピペンの適応となる「生命の危機を伴う症状」

正解は4(呼吸困難)です。

傷病者は「そばアレルギー」の既往があり、昼食後に症状(掻痒感)が出現しているため、アナフィラキシーを発症している可能性が非常に高いです。

  • 4 呼吸困難:

    • エピペン(アドレナリン)の役割: アドレナリンは、血管を収縮させて血圧を上げ、気管支を広げて呼吸を楽にする、アナフィラキシーの特効薬です。

    • 適応の基準: エピペンは、単なる皮膚の痒みや蕁麻疹だけでは使用しません。「呼吸器(息苦しさ、喘鳴、喉の締め付け感)」「循環器(血圧低下、ぐったりする、意識障害)」「消化器(激しい腹痛、繰り返す嘔吐)」など、生命に危険が及ぶような強い全身症状が1つでも現れた瞬間が、絶対的な投与の適応となります。

    • 本症例では、到着時の呼吸数が28/分と頻呼吸になっており、ここで「呼吸困難(息苦しさ)」を訴えたり、喉が腫れて空気が通りにくくなったりした場合は、ためらわずにエピペンを使用(または本人に使用を促す、救急救命士が処置)しなければなりません。

他の選択肢の分析

  • 1 眼瞼腫脹(まぶたの腫れ) / 2 流涙(涙が出る) / 3 鼻汁(鼻水): これらはアレルギー反応における「粘膜症状」や「皮膚症状」に分類されます。不快で見た目にも派手な症状ですが、これら単体では直ちに命に関わるわけではないため、エピペンを注射する基準には該当しません。

  • 5 下痢: アナフィラキシーでは消化器症状(腹痛・嘔吐・下痢)もエピペンの適応になり得ますが、それは「激しい腹痛を伴う」場合や「繰り返す下痢・嘔吐」といった、ショックに繋がるレベルの重症なケースです。単に「下痢がある」という記述のみでは、呼吸困難(気道閉塞・窒息リスク)の緊急度・優先度には及びません。

救急救命士としての臨床的視点:アナフィラキシーのスピード感

  1. 「迷ったら打つ」が世界の鉄則: アナフィラキシーによる死亡原因の第1位は「気道閉塞(窒息)」、第2位は「血管虚脱(ショック)」です。これらは発症からわずか数分〜数十分で急激に進行します。エピペンの投与を迷って遅れることのデメリット(死亡)は、打ったことによる副作用(一時的な動悸など)よりも圧倒的に大きいため、「迷ったら打つ(If in doubt, give it)」が指導ガイドラインの原則です。

  2. 救急救命士によるエピペン投与: 法改正により、救急救命士は「本人が所持しているエピペン」に限り、医師の具体的な指示(特定行為の要請)を受けることなく、自身の判断(包括的指示)で傷病者の大腿外側(太ももの外側)に代替執行(注射)することが可能です。現場で本人が打てないほどぐったりしている、または混乱している場合は、救急隊が速やかに処置を行います。

  3. バイタルサインに騙されない: 到着時、血圧102/82mmHgと一見保たれているように見えますが、アレルギーによる血管拡張が進行すれば、この後一気に血圧が下がって「アナフィラキシーショック」へ移行します。呼吸数28/分という初期の警告サインを見逃さず、いつでもエピペンを打てる体制(あるいはすでに打ったかどうかの確認)を整えることが重要です。

まとめ:アレルギー既往 + 息苦しさ(呼吸困難) = エピペンの絶対適応 = 太ももの外側に直ちに注射!」 アナフィラキシーは救急現場の中で最も「時間との勝負」になる病態の一つです。

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