27 32歳の男性。崩れ落ちた廃材の下敷きになっているところを発見され救急要請された。
救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数28/分。脈拍104/分、整。血圧110/80 mmHg。SpO2値 96%。両下肢の感覚がないと訴えている。1時間前に受傷したことを聴取した。現場到着時の状況を写真(別冊No.13)に示す。救助隊による救出までさらに約30分かかる。
この傷病者の救出直後に致死的な病態を生じえるのはどれか。1つ選べ。
1 神経損傷
2 横紋筋融解
3 下腿骨骨折
4 低酸素血症
5 うっ血性心不全
解答 2
解説
この傷病者は、重量物(廃材や重量鉄骨)に両下肢を1時間以上挟まれており、さらに救出まで30分かかるため、計1時間半にわたり局所の血流が途絶えることになります。このように身体の一部が長時間(一般に2時間以上、または強い圧迫ではそれ未満でも)圧迫されると、骨格筋の細胞が壊死する「横紋筋融解(おうもんきんゆうかい)」が起こります。
なぜ「救出直後」に致死的な病態となるのか?
圧迫されている間は、壊死した筋肉から漏れ出た有害な物質(カリウムやミオグロビンなど)は局所にとどまっています。しかし、救助隊によって重量物が取り除かれた(圧迫が解除された)瞬間に、これらの物質が一気に全身の血流に乗って循環します。
高カリウム血症: 筋肉から大量のカリウムが血液中に流れ込み、救出直後に致死的な心室細動(心停止)を引き起こす原因となります。
ミオグロビン尿: 後に急性腎障害(急性尿毒症)を引き起こします。
したがって、救出直後のタイムプレッシャーの中で最も警戒すべき致死的な病態は、横紋筋融解を基盤として起こる高カリウム血症やショック(クラッシュ症候群)となります。
他の選択肢について
1 神経損傷 両下肢の感覚がないことから、すでに神経損傷や高度な虚血性変化が疑われますが、救出直後に「致死的な」病態(命を奪うもの)になるわけではありません。
3 下腿骨骨折 重量物に挟まれているため骨折の合併は十分に考えられますが、これも救出直後の直接的な死因にはなりません。
4 低酸素血症 意識清明でSpO2 96%であり、胸部や呼吸器への直接的な圧迫の記載がないため、現時点で救出直後に急激に進行する致死的な病態としての優先度は低いです。
5 うっ血性心不全 クラッシュ症候群の進行に伴い、輸液過剰や腎不全から将来的に心負荷がかかる可能性はありますが、救出直後に突然発生する致死的な不整脈(高カリウム血症によるもの)に比べると、病態のタイムラインが異なります。
救急救命士としてのポイント
現場では救出前から大量輸液(細胞外液の投与)を開始し、圧迫解除後の急激な高カリウム血症や低血圧(レスキューデッド)を防ぐためのプロトコールを念頭に置くことが求められる重要な症例です。

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