17 49歳の男性。食事中に突然倒れたところを同僚が目撃し救急要請した。
救急隊到着時観察所見:呼びかけに反応しない。自発呼吸は認めない。頸動脈は触知しない。胸骨圧迫とバッグ・バルブ・マスク換気とを開始し換気良好である。モニター心電図で無脈性電気活動(PEA)と判断した。
次に行う対応はどれか。1つ選べ。
1 異物除去
2 背部叩打法
3 電気ショック
4 気管挿管の指示要請
5 アドレナリン投与の指示要請
解答 5
※救命士王から
ガイドラインにもPEA時の早期アドレナリン投与は効果あることが示されている。原則現場でのアドレナリン投与とし、活動としても早期アドレナリン投与を主眼とした活動が望ましい。なお、ABCアプローチから、PEA時においてもBVM換気に抵抗があれば器具による気道確保が優先される。
解説:PEA(無脈性電気活動)における最優先アルゴリズム
傷病者は食事中に突然倒れ、救急隊到着時に心停止(呼びかけ反応なし、自発呼吸なし、頸動脈触知なし)の状態です。
5 アドレナリン投与の指示要請(正解):
PEAへのアプローチ: モニター心電図の波形が 無脈性電気活動(PEA) と判断されています。PEA(および心静止:Asystole)は、電気ショックの適応がない波形(Non-shockable)です。
1分1秒を争う薬剤投与: JRC(日本蘇生協議会)ガイドラインにおいて、電気ショックの適応がない波形(PEA/心静止)に対しては、「発見・認識後、可能な限り早期(できれば最初のリズムチェック後直ちに行う)のアドレナリン投与」が、自己心拍再開(ROSC)および生存退院率を上げるために極めて強く推奨されています。そのため、直ちにビデオ通話や電話等で医師に指示要請を行うことが最優先されます。
他の選択肢の分析(優先順位のロジック)
1 異物除去 / 2 背部叩打法: 「食事中に突然倒れた」というエピソードから窒息(気道異物)も一瞬疑われますが、観察所見に「バッグ・バルブ・マスク換気を開始し、換気良好である」と明記されています。空気がしっかり肺に入っている(胸が上がっている)ということは、完全に気道が塞がっているわけではない(あるいは心原性など別の原因の心停止)と証明されているため、異物除去の処置を行う必要はありません。
3 電気ショック: 電気ショック(除細動)の絶対適応となる波形は、「心室細動(VF)」と「無脈性心室頻拍(pulseless VT)」の2つ(Shockable波形)だけです。本症例のPEAに対して電気ショックを行うことは効果がないだけでなく、胸骨圧迫の手を止める時間を増やしてしまい不適切(禁忌)です。
4 気管挿管の指示要請: 高度な気道管理(気管挿管や声門上気道デバイス)も重要な特定行為ですが、現在はバッグ・バルブ・マスクで「換気良好」に管理できています。JRCガイドラインの優先順位としては、換気ができている状態であれば、気道管理器具の挿入よりも「アドレナリンの早期投与」の方が優先度(タイムクリティカル度)が高いとされています。
救急救命士としての臨床的視点:アドレナリンの「包括的指示」と「個別指示」
特定行為の要件確認: 救急救命士が心停止傷病者にアドレナリンを投与するためには、「静脈路(ルート)が確保できていること」が必要です。現場の動きとしては、胸骨圧迫と換気を絶え間なく続けながら、速やかに静脈路確保を行い、医師に指示要請をしてアドレナリン(1回1mg)を3〜5分おきに投与します。
PEAにおける「4H・4T」の検索: アドレナリンを投与しつつ、救急隊は「なぜPEAになったのか?」という原因(可逆的な病態)を移動中の車内で推測し、病院へ引き継ぐ必要があります。代表的な原因(4H・4T)には以下があります。
低酸素症(Hypoxia):異物や窒息など
低体温(Hypothermia)
低流動量・低血量(Hypovolemia):大出血や脱水
高/低カリウム血症など代謝異常(Hydrogen ion / Hyper-Hypokalemia)
心タンポナーデ(Tamponade, cardiac)
緊張性気胸(Tension pneumothorax)
血栓症:心筋梗塞や肺塞栓(Thrombosis)
中毒(Toxins)
心肺蘇生の質(High-Quality CPR)の維持: アドレナリンの要請や投与に気を取られて、胸骨圧迫の深さ(5〜6cm)、テンポ(100〜120回/分)、絶え間なさ(中断を最小限にする)がおろそかになっては本末転倒です。チームの連携で役割分担を明確にし、質の高いCPRをキープします。
まとめ: 「心停止波形がPEA(ショック不要) + 換気はすでに良好 = 救命率をあげるために『一刻も早いアドレナリン投与の指示要請』が最優先!」 ガイドラインが「早期のアドレナリン」の重要性をどれだけ強調しているかをストレートに問う、救命士国試の定番かつ極めて重要な問題です。
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