2026年5月24日日曜日

第49回D問題 第39問 小児の溺水における心肺蘇生(CPR)の手順と、成人とのアルゴリズムの違いに関する問題

 39 5歳の男児。家族と一緒に海水浴に来ていて急に姿がみえなくなったため、家族が救急要請した。現場到着後、海中から引き揚げられた傷病者と接触した。

 救急隊到着時観察所見:呼びかけに反応しない。自発呼吸を認めない。脈拍50/分、微弱。

 直ちに行うべき対応はどれか。1つ選べ。

1 人工呼吸

2 胸骨圧迫

3 AED装着

4 静脈路確保

5 胸部突き上げ


解答1


第39問は、小児の溺水における心肺蘇生(CPR)の手順と、成人とのアルゴリズムの違いに関する問題です。

解説:小児の溺水における「呼吸」の優先度

正解は1(人工呼吸)です。

傷病者の年齢(5歳)と、初期評価のバイタルサイン(自発呼吸なし、脈拍50回/分)から、小児の心停止一歩手前の病態であることがわかります。

  • 1 人工呼吸:

    • 溺水の本態: 溺水は、水に溺れたことによる「窒息(酸素不足)」が原因の呼吸原性停止です。心臓そのものの異常ではないため、体内に一刻も早く酸素を送り込む必要があります。

    • 小児の「徐脈」は心停止のサイン: 小児において、自発呼吸がなく、さらに「脈拍が60回/分未満で、循環不全のサイン(微弱な脈)」がある場合は、医療ガイドライン上「心停止」として扱います。

    • 救命処置の順番: 小児の呼吸原性心停止に対する蘇生は、「まず人工呼吸を2回」行い、その後に胸骨圧迫へと移行するアルゴリズムが原則です(A-B-Cアプローチ)。したがって、接触して最初に行うべき対応は人工呼吸になります。

他の選択肢の分析

  • 2 胸骨圧迫: 小児の脈拍が50回/分で微弱なため、胸骨圧迫も当然必要になります。しかし、溺水という「強い低酸素状態」が原因であるため、まずは2回の人工呼吸を行って酸素を供給してから胸骨圧迫を開始するため、順番として人工呼吸が先になります。

  • 3 AED装着: 溺水による心停止では、心室細動(VF)などの除細動が必要な波形よりも、心静止や無脈性電気活動(PEA)になることが圧倒的に多いです。AEDの準備は並行して行いますが、まずは人工呼吸と胸骨圧迫を直ちに開始しなければなりません。

  • 4 静脈路確保: 心肺蘇生や換気が最優先です。点滴の準備はこれらがしっかり行われ、搬送の準備が進む中で行う処置(アドレナリン投与等のため)であり、ファーストステップではありません。

  • 5 胸部突き上げ: これは「異物による気道閉塞(窒息)」の際、1歳未満の乳児に対して行われる手技です。本症例は5歳児の溺水であり、不適切です。また、溺水者のお腹や胸を押して水を無理に吐き出させる行為は、胃内容物の逆流・誤嚥を招くため禁忌です。

救急救命士としての臨床的視点:小児CPRの鉄則

  1. 「大人と子供の違い」を意識する: 大人が突然倒れた場合は「心原性(心臓の病気)」が多いため、胸骨圧迫から始める「C-A-B」が基本です。しかし、子供の心停止の多くは「呼吸原性(溺水、窒息など)」です。そのため、呼吸(A・B)の管理をより重視した蘇生(2回の人工呼吸からスタート)が必要になります。

  2. 基準値「60回/分」の暗記: 「子供の脈が触れるから、胸骨圧迫はしなくていい」と判断してはいけません。1歳から思春期前の小児において、脈拍が60回/分未満で微弱な場合は、胸骨圧迫の適応となります。

まとめ:小児の溺水 + 息なし + 脈拍60未満 = 窒息による心停止とみなし、まず人工呼吸(酸素供給)から蘇生開始!」 窒息が原因の子供のピンチには、何よりもまず「空気(酸素)」を送り込むことが最大の救命策になります。



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