40 60歳の男性。某年7月某日、快晴。オートバイでツーリング中にこむら返りが起こったため、路肩に止まって休んでいたが回復せず、次第に意識がもうろうとしてきたため、同行していた友人が救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS100。呼吸数 16回/分。脈拍 120回/分、整。血圧 94/44 mmHg。体温38.5℃。SpO2値94%。ミネラルウォーターは摂っていたが、午前10時から3時間休みなく走っていたという。救命救急センターに搬送する根拠となるのはどれか。1つ選べ。
1 こむら返り
2 意識JCS100
3 血圧 94/44mmHg
4 体温38.5℃
5 3時間の走行
解答 2
第40問は、夏季に多発する熱中症の重症度分類と、高次医療機関(救命救急センター)への搬送基準を問う問題です。
解説:熱中症の重症度分類と意識障害
正解は2(意識JCS100)です。
熱中症は、症状の重さによってⅠ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)の3段階に分類されます。この分類は、搬送先を選定するための最も重要な基準です。
2 意識JCS100:
熱中症の分類において、「意識障害」「小脳症状(ふらつき)」「けいれん」「中枢神経症状」が認められた時点で、自動的に「Ⅲ度(重症)」と判定されます。
Ⅲ度の熱中症は、脳をはじめとする多臓器不全に進行する危険があるため、現場での冷却処置と並行して、集中治療が可能な救命救急センター(三次医療機関)へ直ちに搬送する必要があります。これが搬送の最大の根拠です。
他の選択肢の分析
1 こむら返り: これは熱中症の「Ⅰ度(軽症)」で見られる典型的な症状(熱けいれん)です。水分や塩分の補給、涼しい場所での安静で対応できるレベルであり、これ単体では救命救急センター選定の根拠にはなりません。
3 血圧 94/44mmHg / 4 体温38.5℃: これらは「Ⅱ度(中等症:熱疲労)」の段階でもよく見られる所見(脱水による頻脈・低血圧、体温上昇)です。もちろん重症化のサインではありますが、医療機関の「階層(二次か三次か)」を決定づける医学的根拠としては、中枢神経症状(意識障害)の存在が最優先されます。
5 3時間の走行: これは熱中症を発症した「原因・背景(環境因子)」であり、傷病者の現在の病態そのものを表す指標ではないため、搬送先を決定する根拠にはなりません。
救急救命士としての臨床的視点:熱中症Ⅲ度の戦略
「意識障害 = Ⅲ度 = 救命センター」の徹底: 現場で「声をかけても生返事しかしない(JCS 10〜100)」ような熱中症患者に出会ったら、ためらわずに三次医療機関を選定します。熱中症による死亡を減らすための鉄則です。
現場からの積極的冷却(Fire in the house): 熱中症Ⅲ度は「体の中で火事が起きている状態」です。搬送を急ぐのはもちろんですが、車内ではエアコンを全開にし、腋窩(わきの下)、頸部、鼠径部(足の付け根)などの太い血管が通る場所を氷嚢で冷やすほか、衣服を脱がせて霧吹きで水をかけ、うちわで仰ぐ(気化熱冷却)など、1分1秒でも早く体温を下げる努力を始めます。
「水だけ摂取」の罠: 傷病者は「ミネラルウォーターは摂っていた」とありますが、大量の汗をかいた後に塩分(ナトリウム)を補給せず水だけを飲むと、血液中の塩分濃度が薄まり、低ナトリウム血症を引き起こして「こむら返り」や「意識障害」を悪化させます。スポーツドリンクや経口補水液の大切さがよく分かる症例です。
まとめ: 「熱中症 + 意識障害(少しでもおかしければ) = Ⅲ度(重症) = 救命救急センターへ直行」 バイタルサインの数値以上に、「意識の変容」を見逃さないようにしましょう。
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