2026年5月30日土曜日

第49回D問題 第31問 交通事故を目撃、または遭遇したという強い精神的ストレス・不安が引き金となって引き起こされた「過換気症候群(過換気状態)」に関する臨床的判断を問うもの

 31 路線バスが乗用車に衝突し、目撃者が救急要請した。トリアージの結果、呼吸困難を訴えた傷病者1名のみの対応となった。

 救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数36/分。脈拍98/分、整。血圧140/80 mmHg。体温36.2℃。SpO2値 100%。外傷は明らかでないものの、息苦しさを訴えている。

 この病態について適切なのはどれか。1つ選べ。

1 胸式呼吸法を行わせる。

2 酸素投与が必要である。

3 安心させるような声がけをする。

4 ペーパーバッグ再呼吸法を行う。

5 パニック障害の診断基準を満たすものが多い。


解答 3


解説

  • 3 安心させるような声がけをする(正解) 過換気症候群の第一選択の対処法は、精神的な不安や恐怖を取り除き、リラックスさせることです。傷病者に寄り添い、落ち着いた声トーンで「大丈夫ですよ」「ゆっくり息を吐きましょう」などと声をかけ、呼吸を整えるよう促すことが最も適切です。

  • 1 胸式呼吸法を行わせる(誤り) 過換気状態では浅く速い呼吸(胸式呼吸が優位)になっているため、これをさらに助長させる胸式呼吸法は不適切です。お腹を膨らませたりへこませたりする「腹式呼吸」を促し、特に「息を吐くこと(呼気)」を意識させることが効果的です。

  • 2 酸素投与が必要である(誤り) 観察所見で SpO2値 100% となっており、血液内の酸素は十分に満たされています。過換気状態では、呼吸が速すぎるために二酸化炭素(CO2)が体外に排出されすぎてしまい、血液がアルカリ性に傾く(呼吸性アルカローシス)ことが問題の核心です。そのため、酸素投与の必要性はありません。

  • 4 ペーパーバッグ再呼吸法を行う(誤り) かつては紙袋を口に当てて吐いた息を吸い込ませる「ペーパーバッグ法」が行われていましたが、現在は原則禁忌(行ってはならない)とされています。理由として、本物の過換気ではなく、肺塞栓症や心筋梗塞、気胸といった「本当に低酸素状態に陥っている重篤な疾患」だった場合、紙袋を当てることで急激に低酸素血症を悪化させ、心停止などを引き起こす危険性があるためです。

  • 5 パニック障害の診断基準を満たすものが多い(誤り) 今回のような「交通事故の目撃」という明らかな突発的ストレス(外因)によって引き起こされる過換気状態は、一過性の急性ストレス反応によるものが多く、これだけで「パニック障害(明確な理由なく突然パニック発作を繰り返す精神疾患)」の診断基準を満たすケースが多いとは言えません。

救急現場でのポイント

現場での観察において、意識清明・外傷なし・SpO2 100%であるにもかかわらず「呼吸数36/分」と著しい頻呼吸を呈している点から、精神的要因による過換気を早期に疑うことが重要です。まずは優しく声をかけながら、同調呼吸(医療従事者が一緒にゆっくり呼吸の手本を見せる)などを行い、吸気と呼気の比率を「1:2」程度(しっかり吐かせる)にするよう誘導します。

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