61 便が黒色を呈する薬剤はどれか。1つ選べ。
1 鉄剤
2 利尿薬
3 抗菌薬
4 降圧薬
5 血糖降下薬
解答 1 11版P.534
【AIによる回答】
第61問「薬剤による便の色調変化」について、臨床的に重要な鑑別ポイントを解説します。
簡易解説
正解は1です。
鉄剤(硫酸第一鉄など)を服用すると、吸収されなかった鉄が腸内で酸化されたり、硫化水素と反応して硫化鉄になったりするため、便が黒色(タール様)になります。これは薬剤による正常な反応であり、病的な出血と区別する必要があります。他の選択肢の薬剤では、通常、便の色が黒色に変化することはありません。
詳細解説
救急現場や医療機関での問診において「便が黒い」という訴えは、上部消化道出血(胃潰瘍や十二指腸潰瘍など)によるタール便(メレナ)を疑わせる重要なサインです。しかし、薬剤の影響による「偽メレナ」を判別できなければ、不要な緊急搬送や処置を招く可能性があります。
1. 正解の根拠:鉄剤と便の色
貧血の治療などで処方される鉄剤は、経口摂取された鉄のすべてが吸収されるわけではありません。吸収されなかった鉄分が便中に排出される際、黒い色を呈します。
鉄剤による黒色便の特徴: 便自体に光沢があり、独特の鉄臭(金属臭)がすることがありますが、消化管出血のような腐敗臭(生臭い臭い)はありません。
臨床上の注意: 患者が「最近、便が黒くなった」と訴えた場合、必ず「貧血の薬(鉄剤)を飲み始めていないか」を確認することが、鑑別の第一歩となります。
2. その他の「便を黒くする」物質
鉄剤以外にも、以下のものを摂取すると便が黒くなることがあります。
ビスマス製剤: 胃潰瘍の治療薬や下痢止めに含まれることがあります。
活性炭: 中毒処置などで投与される吸着剤です。
食品: イカスミ、赤ワイン、大量のレバーや赤身肉、ブルーベリーなど。
3. 消化管出血(真のタール便)との違い
救急救命士が最も警戒すべきは、上部消化管出血による黒色便です。
血液中のヘモグロビンに含まれる鉄が、胃酸や腸内細菌によって酸化され「ヘマチン」に変化することで黒くなります。
| 特徴 | 鉄剤による黒色便 | 上部消化管出血(タール便) |
| 色調 | 黒色(やや緑がかることもある) | 漆黒(カラスの濡れ羽色) |
| 性状 | 通常の硬さであることが多い | 泥状、粘り気がある(アブラ状) |
| 臭い | 特になし、または金属臭 | 独特の腐敗臭(生臭い) |
| 随伴症状 | 特になし | めまい、ふらつき、頻脈、血圧低下 |
4. 救急救命士としての臨床的視点
現場で黒色便を確認した際、以下の手順で評価を行います。
バイタルサインの確認: 出血性ショックの兆候(頻脈、冷や汗、血圧低下)がないかを確認します。
既往歴・内服薬の聴取: 鉄剤の服用だけでなく、逆に「便を黒くしない薬(抗凝固薬や痛み止めのNSAIDs)」を飲んでいないかも重要です。これらは消化管出血のリスクを高めるからです。
随伴症状の確認: 腹痛、吐血(コーヒー残渣様)、心窩部痛の有無を確認します。
もし、鉄剤の服用がなく、バイタルサインの不安定さや特有の臭いを伴う黒色便を認めた場合は、上部消化管からの大量出血の可能性を考慮し、迅速に外科的・内視鏡的処置が可能な医療機関を選定しなければなりません。
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